情報公開法以前の情報公開制度


この原稿は、サンフランシスコ在住の岡部一明(Kazuaki (Aki) Okabe)さんが、市民活動に助成する日本でも数少ない大竹財団発行・月刊『地球号の危機』1997年9月号に載せたものをオンラインの転送可の許可を得て、同報通信で公開された文章ある。岡部一明さんは同報通信の中で、基本的に転載自由の原則をとっている言うことであるため、図書館学、書誌学、情報工学、マルチメディアの分野で重要な資料であり、読む機会が限られた人にだけということは残念であることから、ここに全文転載する。なお、このような文書を読みたい人は、岡部一明さんの知人になることです。知人になるには、Internet: kokabe@mri.biglobe.ne.jpでお願し、了解されれば可能になる。米国のGAO(General Accounting Office/米国連邦会計監査院)は2002年7月9日に、ヒューマン・サービスの一環と して、政府情報システムにおける目的資料の見つけやすさについて、調査報告書「Human Services: Federal Approval and Funding Processes for States' Information Systems. GAO-02-347T, July 9」を公開した。詳細情報はURL(http://www.gao.gov/cgi-bin/getrpt?GAO-02-347T)で知ることができる。米国のGAO(General Accounting Office)は2002年7月9日に、ヒューマン・サービスの一環と して、政府情報システムにおける目的資料の見つけやすさについて、調査報告書「Human Services: Federal Approval and Funding Processes for States' Information Systems. GAO-02-347T, July 9」を公開した。詳細情報はURL(http://www.gao.gov/cgi-bin/getrpt?GAO-02-347T)で知ることができる。1966年7月4日にU.S. FOIAとして施行されてから、2003年7月4日で37周年を迎えたFreedom of Information Act(情報の自由法)に付いて「Freedom of Information Act 37th Birthday Report」が公開された。詳細情報はURL(http://www.gwu.edu/~nsarchiv/NSAEBB/NSAEBB93/)で知ることができる。公共図書館を訪れる人が減り、それと同時に、一人あたりに必要な図書館の経費は反比例 して高額化し、予算が削られ、購入できる本の量も激減し、資金を必要とする 公共図書館は、資料を放出するようになり、恐ろしい崩壊に向けたサイクルが 急速に回転しはじめて、公立図書館が閉鎖の危機に遭遇していると報告したイギリスのHampshire libraryのレポート[Who's in Charge(誰が金を払うのか)」をLibriが初めて PDFで2004年4月27日に公開した。詳細情報はURL(http://www.rwevans.co.uk/libri/Who%27s%20in%20char_e_(as%20printed.pdf)で知ることができる。「UN Special Rapporteur on Freedom of Opinion and Expression」「the OSCE Representative on Freedom of the Media」「the OAS Special Rapporteur on Freedom of Expression」は2004年12月7日に、情報公開の原理に基づいて、開放の仮定を確立する情報法へのアクセスを採用し、かつそれらが情報へのアクセスを妨害しないことを保証する秘密法の修正を要求した「情報と秘密法への共同声明(Joint Declaration addressing access to information and secrecy laws)」を発表した。詳細情報はURL(http://www.ifex.org/en/content/view/full/63064/)また、共同声明はURL(http://www.article19.org/docimages/1888.doc)で知ることができる。米国のFDLP(Federal Depository Library Program)は2006年2月6日に、GPO(Government Printing Office/印刷局)の電子コミュニケーションメカニズムを通した連邦政府の官庁出版物保管図書館スタッフと他のGPOの情報普及プログラムについて「Information Dissemination Policy Statement(情報普及施政方針)」を公開した。詳細情報はURL(http://ww1.access.gpo.gov/GPOAccess/su_docs/fdlp/pubs/policies/id76_02-06-06.pdf)で知ることができる。

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情報公開法以前の情報公開制度 米GPOとデポジトリー図書館の現状
岡部一明

公開情報へのアクセス
 政府情報へのアクセスは情報公開法ばかりがすべてではない。例えばラルフ・ネーダーは、情報公開について重要な点として次の3つを上げ、これらすべてを総合的に考慮することが大切だと言っている。

1)政府はどのような情報を集めているか
2)政府はどのような情報を「パブリッシュ」(出版、公開)しているか
3)市民はどのように、パブリッシュされてない情報にアクセスできるか

 ネーダーによれば、この中で情報公開法(連邦情報自由法FOIA)は3の課題を実現する制度だという。そして、「しばしば情報公開運動を進める人たちは、この3に関する問題だけに焦点を当てがちだが、市民の知る権利はこれら3つすべてによって規定されている」と強調している(Ralph Nader, 'FREEDOM OF INFORMATION' (Statement of Ralph Nader before FOIndiana, September 21, 1996)。
 要するに情報公開法というのは、例えば食糧費の領収書なども含めて「パブリッシュ(一般向けに発行)されていない情報」を開示させる制度だ。それも当然に重要だ が、それだけでなくて、その基本として、すでにパブリッシュされている情報がきち んと市民の手に届く体制になっているかどうかも、同様に重要だということをネーダ ーは言っている。
 例えば環境アセスメント書は公開文書である。しかし、これを入手するのはなかなか難しい。散逸しており、たとえ国会図書館にあるにしても地方の人が見るのは容易ではない。各種政府委託報告書も外郭団体が高い価格で発行していたりする。あるいは国会本会議の議事録はオンライン化されて省庁レベルの役人は自由に使っているが、このデータベースに一般市民はアクセスできない。これらの情報不完全公開を打開するには情報公開法だけでは充分でない。日頃の公開情報へのアクセスも含めて政府情報のあり方を総合的に問題にしなければならない。

180年前からの情報公開制度
 アメリカでは情報公開法(ネーダーの言う3の段階の制度)は1966年にできた。では、それ以前の、パブリッシュされた情報の普及・提供制度(2の段階の制度)は何だったのか。政府印刷局(GPO)の活動や、そのデポジトリー図書館網の制度などがこれに相当するだろう。例えば「アメリカで最も古い情報公開制度」と言われるディポジトリー図書館プログラム(FDLP)は今から200年近く前、1813年に成立している。
 これら公開情報アクセス体制の現況について、興味深い資料が出ている。ディマリオ政府印刷局(GPO)局長が今年3月13日、議会内合同印刷委員会(JCP、GPOの監督機関)で報告したレポートだ(Michael F. Dimario, Public Printer, Prepared Statement before the Joint Committee on Printing on Oversight of the Government Printing Office, March 13, 1997, http://www.access.gpo.gov/)。これを参照しながら、情報公開法の基礎にあるアメリカの基本的な情報公開制度について紹介する。

GPOが政府刊行物の60%を発行
 米連邦政府情報は政府印刷局(GPO)が印刷することになっている(Sec.501, Title 44, USC)。つまり、外郭団体などを通じて非公共的文書として発行することはできず、すべての政府公共文書をGPOが一元印刷する体制が取られている。そしてGPOの印刷物には「印刷コスト・プラス・50%」という厳しい価格規定(Sec.1708)があり、市民アクセスを容易にする価格・料金が義務づけられている。
 ただし、GPO局長レポートによれば、一元印刷の規定は厳密には実行されていない。下記表の通り、40%の印刷が他省庁部内で独自に行なわれている。点数ベースでは、政府刊行物の約50%にあたる5万5000点。こうした印刷物を「逃避刊行物」といい、その多くは商務省全米技術情報サービス(NTIS)に納入されている技術関係文書だ。逃避刊行物は、価格抑制の規定がなく、後述デポジトリー図書館システムを通じての提供からも洩れるため、公共アクセス上、問題があると指摘されている。
 また、GPO印刷物もすべてGPOによって印刷されているのでなく、下表の通り、4分の3は競争入札によって民間に外注されている。入札対象者として約1万の印刷業者(全米の印刷会社の4分の1、従業員総計20万人)の登録があり、内、約3500社が恒常的に契約をとっている。

1996年度の政府の印刷、複写支出
GPO 外注   5億4400万ドル
議会印刷     8400万ドル
その他部内印刷 1億1200万ドル
他省庁印刷   4億9100万ドル(40%)


販売プログラム
 GPO印刷物は、販売プログラムとデポジトリー図書館プログラムを通じて配布される。販売部門の方は独立採算である。つまり予算はもらわないで、売り上げで自分のところの経費をまかなう。日本の大蔵省印刷局と同じだ。
 販売のため全米24の刊行物センターをもっている。日本のいわゆる政府刊行物センターに相当する。販売数は、通信販売を含めて年間1億冊に達する。

連邦デポジトリー図書館プログラム(FDLP)
 GPOが印刷した政府刊行物は、全米約1372のデポジトリー図書館に配布され、そこで人びとが無料で閲覧できる。このデポジトリー図書館制度は日本になく、あまり知られてもいないが、前述の通り「アメリカで最も古い情報公開制度」(ディマリオGPO局長)である。1813年12月27日の上下院合同決議で基本が定められ、以後、各種決議、立法により拡充されてきた。1962年デポジトリー図書館法は「デポジトリー図書館は政府刊行物を一般公衆の自由な利用にふす」(Section 1911, Title 44, USC)と規定し、その上院法案が次のような立法史的解説を行なっている。
 「デポジトリー図書館システムは、永年にわたり確立されてきた連邦政府と全米の指定主要図書館間の協同プログラムであり、アメリカ国民の政府文書へのアクセスを保証するため、一定の種類の政府刊行物を無料でそれら図書館に供給する制度である。」(S. Rep. 1587 on H.R. 8141, 87th Congress, p.3)
 デポジトリー図書館は、すべての選挙区に一つ以上設置されるのが基本である。一般の公立図書館、大学・研究図書館などが指定され、連邦政府(GPO)からの資金援助で政府刊行物を系統的に備える。政府援助が出れば当然一般公開義務が生じる。アメリカの大学図書館が一般市民でもノーチェックで入れるなど徹底した公開制をとっている背景には、こうしたデポジトリー図書館の一般公開義務がある。全米1372館の内53館が広域図書館に指定され、ここには配布される全資料をそろえ、かつそれを(一部の例外を除き)永久に保存することが義務づけられている。
 デポジトリー図書館にまわされる刊行物は年間5万7000件(1640万冊)に上る。これは日本の年間書籍出版件数に匹敵するから、はんぱな数ではない。図書館内では、インターネット、CD-ROMなども使える。当然ながらすべて無料。利用者は全米で月75万から95万人に上る。1976年度には、5万7000件1640万冊のの政府刊行物が全米のデポジトリー図書館に配備された。CD-ROMの配備は同年度段階で639件である。 デポジトリー図書館に指定されている施設の内訳は、大学など学術図書館55%、公共図書館20%、法律大学院図書館11%、州立図書館6%、連邦機関図書館5%、特設図書館3%である。現在、すべてのデポジトリー図書館でインターネット接続が提供されている(95年段階では75%だった)。

GPOアクセス
 1993年6月に、政府印刷局電子情報アクセス強化法(通称「GPOアクセス法」)が成立した。議会記録、連邦規則などの基礎文献をはじめ、議会、連邦政府データベースをGPOが総合的に市民に提供することを定めている。同法に基づき、政府情報への一元的な窓口として、インターネット上のウェブ・ページ「GPOアクセス」がつくられた。現在、ここから各省庁のホームページその他70以上の連邦政府データベースにアクセスできる。月平均250万から300万件の政府文書引き出しがある(http://www.access.gpo.gov/)。

CD-ROM
 GPOは連邦省庁の中でも最も早くから政府情報のCD-ROM化技術を開発してきた官庁として知られる。現在、GPO発行のCD-ROMは約100件。注目すべきは値段で、どれもほぼ2-30ドル台だ。例えば、アメリカの法律全文である『米法典』(U.S. Code on CD-ROM)は37ドルである。印刷物だと3万ページ、全20巻、重さ65キロ、書棚に並べて幅1.5メートルになる膨大な文書である。日本の法律全文は(社)行政情報システム研究所から磁気テープの形で出ているが、これは10万円。GPOは日本の25分の1の値段で法律全文を提供していることになる(西邑亨「法律全文ディジタルデータ 価格競争は日本の勝ち(?)」『98Magazine』1997年7月号)。
 また、環境保護庁(EPA)の有名な『1987-94年有害廃棄目録』(1987-1994 EPA Toxic Release Inventory)は43ドルである。これは、643有害物質について、全米31,000施設における年毎の環境への排出量を詳細に報告させているものだ。データを徹底して公開することによる汚染削減規制効果を狙ったもので、これにより87年以降、有害物質排出が46%減った(Environmental Protection Agency, Press Release, May 20,1997)。市民の対企業公害規制活動の強力な情報ツールとなっている。
 GPOは、1992年に、世界最大のコンピュータユーザー・グループであるSIGCATからCD-ROM賞を受けた。1993年には米会計検査局(GAO)から、最もコスト効率がよいCD-ROMプログラムとの認定を受けている。
 これに対し日本では、桁違いに高い政府情報CD-ROMが問題になっている。例えば全国60万人の政府・自治体職員をリストアップした『官公庁職員録』のCD-ROMは45万円もする。電子媒体は情報のコストをドラスティックに下げる可能性を秘めている。ところが日本では、電子情報だから高く売れるぞという転倒した(時代錯誤の)意識がまかり通っているようだ。日本政府の努力を促すためにも、以下に、GPOのCD-ROM作成コスト計算を示しておく。1993年段階の価格28ドルのCD-ROMの例。読み出しソフトウェアのライセンス料金9ドルを含めて原価18ドル67セント、それに50%の配布コストを上乗せして価格28ドルというコスト計算が示されている。

Cost Breakdown: The House Ways & Means Committee, Overview of Entitlement Programs (the Green Book on CD-ROM), published by GPO, $28
Retrieval software license:$9.00
Disc replication: $1.04
Jewel box: $.35
Manual/documentation: $.07
Labeling: $.04
Handling: $5.80
Mailing carton: $.43
Postage (first class): $1.44
SUBTOTAL...................$18.67
50% by-law factor $9.34
TOTAL......................$28.01
Rounded Price $28.00
(出典:GAO/IMTEC-93-34FS)

政府情報の半分が電子的提供
 ディマリオ局長によれば、1988会計年度末までにデポジトリー図書館に集められる政府情報の内訳は次のようになるという。
電子形態      50%
紙         30%
マイクロフィッシュ 20%
 つまり、これまでの印刷物の形態は全体の3割に過ぎなくなり、オンラインやCD-ROMなどの電子形態情報が全体の半分になるということだ。同局長はまた、1996年度に全米のデポジトリー図書館は1カ月平均170万冊の印刷物資料を受け取ったが、GPOアクセスを通じた市民のオンライン取得文書件数は月240万だったとも指摘する。電子形態での政府情報が、伝統的な印刷物情報を急速に上まりつつあることを示すデータだ。
 もちろん、情報弱者の発生を阻止できればという条件付きだが、電子情報の普及は情報公開を新しい段階に進める。わざわざ国会図書館まで行かなくともいい。省庁まわりをしなくともいい。どんな地方に居ても、自宅から霞が関をまわると同程度の情報が取れる。日本のインターネットではあまり実感しないが、アメリカのインターネット上での政府情報の出方にはうならされる。公開情報である限り何でも取れるという感じに近くなってきた。自分でも、最近あまり図書館に行かなくなったのがはっきりわかる。

日本の課題
 アメリカでは、情報公開法ができる以前に、公開情報を広く市民に提供する各種制度が長い時間をかけてつくられていた。日本では、そうした歴史がないところに、一番先端の部分「情報公開法」が突然、関心があつまってきた。むろん、情報公開法が強力な情報アクセス手段である。しかし、目につきやすい先端部分の背景には長い時間かけてつくられた総合的な政府情報公開制度があることを忘れてはならない。特に、多くの政府情報が外郭団体を通して高価格でしか入手できない状況がある日本では、その背景部分の整備がとりわけ重要な課題だ。日本では、アメリカの辿った道とは逆に、最先端(情報公開法)からはじめて、その基礎部分(総合的な政府情報アクセスの制度)もすべてつくるという戦略が求められている。