人権救済の中間取りまとめ-06

人権救済機関の組織体制の整備

第6 人権救済機関の組織体制の整備
1 人権救済機関の独立性等
   積極的救済を含む救済を行う人権救済機関は、政府からの一定の独立性が不可
欠であり、そのような独立性を有する委員会組織とする必要がある。
  I 人権救済機関は、差別、虐待に係る私人間の様々な紛争に関し、強制調査権限を行使するなどして人権侵害の有無を認定した上、勧告・公表や訴訟援助を含む手法により被害者救済を図ることや、公権力による同種の人権侵害について同様の積極的救済を図ることに加え、マスメディアによる一定の人権侵害についても積極的救済の対象とすることなどに照らすと、これまでの内部部局型の組織の充実・強化による対応には限界があり、政府から一定の独立性を有し、中立公正さが制度的に担保された組織とする必要がある。
 また、広範な人権侵害について様々な判断を求められることなどに照らすと、合議制の機関が相当であり、上記の点も併せると、人権救済機関は、独立性のある委員会組織とすべきである。
  II 委員会の業務を十分に支え得る事務局を整備する必要がある。後記(第6、6)のとおり、委員会は、人権救済とともに、人権啓発をも所掌すべきであることから、委員会の設置に向けては、現在これらを主要な所掌事務としている法務省人権擁護局の改組も視野に入れて、体制の整備を図るべきである。

2 人権救済機関の全国的な組織体制の在り方
   人権救済機関については、全国各地で生起する人権侵害事案に対して実効的な救済を可能とする組織体制を構築する必要があり、そのためには、法務局・地方法務局の人権擁護部門を改組することなどにより、人権侵害事案の調査や調停、仲裁等に当たる委員会事務局の地方における組織体制の整備を図る必要がある。
  I 意思決定機関としての委員会は、事務局の行う調査に基づいて勧告・公表や一定の訴訟援助等についての決定を行うものとし、委員会を支える事務局は、相談業務のほか、事案の処理に関して委員会を補佐するため、申立事案の調査を行い、その結果を委員会に報告し、また必要に応じて、調停、仲裁を行うなどの役割を担うものとすべきである。なお、一定の事案については、委員会又はその構成員が自ら調査等を行うことも視野に入れた仕組みとする必要があ
る。
  II 上記の事務分担の下で、日々各地で生起する人権侵害事案に適切に対処するためには、法務局・地方法務局の人権擁護部門を改組することにより、委員会事務局の地方における組織を整備するとともに、専門性を有する職員や人権擁護委員の確保により、その体制整備を図る必要がある。なお、事務局の地方組織と委員会の間の迅速な情報伝達を可能とする仕組みの導入も必要である。

3 人権擁護委員が人権救済に果たすべき役割
   人権擁護委員は、今後も積極的に相談業務に関与するほか、当該市区町村や他の民間ボランティア、被害を受けやすい人々等との日常的な接触を通じて、人権侵害の早期発見に寄与するなどの役割を果たすとともに、さらに、その適性に応じて、あっせん、調停、仲裁にも積極的な参加を行うなど、積極的救済にも寄与すべきものとして位置付けるべきである。
  I 全国の市区町村に配置された人権擁護委員は、最も身近な相談窓口であり、その専門性の涵養等を通じて相談の質的向上に努めるとともに、当該市区町村や民生委員等の民間ボランティア、さらには被害を受けやすい人々等との日常的な接触を通じて、様々な人権侵害の早期発見に努め、人権救済においてアンテナ機能を担うことが期待される。
  II 人権救済には、一定の専門的知識、経験、素養等が必要であるが、人権擁護委員にも、その適性に応じて、あっせん、調停、仲裁やその調査手続への積極的な参加を求め、調停等に関する体制の充実を図るべきである。

4 人権救済機関の人的構成に関する留意点
   委員会の構成に当たっては、人権問題を扱うにふさわしい個人的資質を有する委員を確保すべきはもちろんのこと、その選任には国民の多様な意見が反映される方法を採用すべきであり、また、実際の調査や審査事務を担当する事務局職員を質・量ともに充実する必要がある。人権擁護委員制度については、適任者確保の観点から、改めて検討することとする。
  I  委員に関しては、中立公正で人権問題を扱うにふさわしい人格識見を備えた者を選任すべきは当然であるが、その選任については、国会の同意を要件とするなど国民の多様な意見が反映される方法を採用すべきであるとともに、ジェンダーバランスにも配慮する必要がある。
  II  人権侵害の調査や調停、勧告等の事務に携わる事務局職員にも、法的な知識、素養や各種の人権問題に対する理解を含む専門性が求められる。人権救済制度が真に実効的なものとなるか否かは、救済措置や調査権限の整備等と並んで、このような専門性を有する職員を質的・量的にいかに確保するかにかかっていると言っても過言でなく、これを可能とするための人事システムや研修の整備に格別の配慮が必要である。
  III 人権救済に関与する人権擁護委員にも、これにふさわしい専門性が求められる。人権擁護委員制度については、人権救済や人権啓発において人権擁護委員が果たすべき重要な役割に照らし、適任者確保の観点から、人権救済制度の在り方に関する答申後に、本審議会において引き続き検討を行うこととする。

5 救済にかかわる他の機関・団体との連携の在り方
   人権救済機関は、様々な分野において各種の救済にかかわる取組を実施している国、地方公共団体、民間の関係機関・団体等との間で、緊密な連携協力関係を構築していく必要がある。
 (1) 国
     人権救済機関は、それぞれの分野において被害者の救済にかかわっている国の機関との間で、適正な役割分担の下に連携協力関係を築いていく必要がある。
 (2)  地方公共団体
    I  市町村や都道府県においては、各種の相談事業が展開されているが、身近な相談体制の整備の観点からも、人権救済機関は、地方公共団体の相談窓口と連携協力し、救済すべき事案を適切に人権救済の手続に乗せていく必要がある。
    II  都道府県においては、児童相談所や婦人相談所による取組を始め、一定の分野において、人権侵害の被害者の保護等にかかわる施策が実施されているが、実効的な救済を図るためには、人権救済機関は、特に被害者の保護の面を中心に、これら施策を実施する機関との間で連携協力関係を深めていく必要がある。また、虐待事案等における警察の役割は重要であり、警察とも連携協力していく必要がある。
    III 地方公共団体においては、そのほか、人権救済にかかわる様々な独自の取組もみられるところであり、人権救済機関としては、それらも視野に入れ、地方公共団体と連携協力していく必要がある。
 (3) 民間
     広く人権擁護の活動を行っている日本弁護士連合会、単位弁護士会や、様々な分野で被害者の救済に取り組んでいる民間団体等との間においても、適正な連携協力関係を構築していく必要がある。

6 人権救済機関が他に所掌すべき事務
   人権救済機関は、人権救済とともに、人権啓発、政府への助言等の事務を所掌すべきであり、そのための組織体制も併せて整備する必要がある。
  I 第1で述べたとおり、人権尊重の理念を普及高揚し、人権侵害の発生を未然に防止する一般的な人権啓発と、個別の人権侵害に関して被害者を救済する人権救済は、人権擁護行政における車の両輪であり、人権尊重社会の実現のためには、両者を総合的かつ有機的に進めていくことが肝要である。いわゆるパリ原則や国連人権センター作成のハンドブック(注2、注3参照)も、両者を国内人権機構の重要な任務と位置付けているところである。したがって、人権救済機関は、人権啓発も併せて所掌すべきであるとともに、人権救済機関の組織体制の整備に当たっては、先の答申で提言した人権啓発に関する施策の実施を含め、人権啓発の総合的かつ効果的な推進が可能となるよう特段の配慮が必要である。
  II 人権救済機関が救済や啓発に係る活動の過程で得た経験・成果を政府への助言を通じて政策に反映させていくことも有用であり、政府への助言は上記パリ原則等においても国内人権機構の重要な任務と位置付けられている。したがって、人権救済機関は、この機能をも併せ持つべきであり、さらに人権白書の作成と国会への提出、国連や諸外国の国内人権機構との協力等もその任務とすべきである。