電子商取引環境整備の論点-10

電子商取引環境整備研究会中間論点整理/論点整理/取引安定性の確保/取引における信頼性の確保/消費者の保護/適切な取引判断を可能とする十分かつ適切な情報提供の在り方

B.消費者の保護

 電子商取引は、消費者の購買機会を拡大させ、選択の幅を広げるものであ ると同時に、利用者層の拡大に伴い、電子商取引を巡る消費者トラブルの発生・拡大も懸念されている。

 個別商品に関する知識の偏在、更には資力の格差等により、現実取引においても一般消費者は弱い立場に置かれることが多く、法制度や事業者の自主的な取組により、広告規制や返品ルールなど、様々な消費者の保護のための仕組みが存在している。電子商取引においても、基本的にこの考え方は踏襲されるべきである。

 一方、電子商取引については、消費者保護が問題となる取引についての実績がまだほとんどないため、事業者側においても自主的対応を図る拠り所がないという状況にある。また、現行の消費者保護に関する法制度が、様々な取引実態や事業者による自主的対応を踏まえて形成されてきた点に着目すると、現行消費者保護関連法制度の解釈を明確化するとともに、例えば、消費者保護のための情報提供の方法や自主返品の仕組み、あるいは広告の在り方等に関する民間事業者によるガイドライン作りが、まず第一に必要であろう。また、事業者にとっても、こうした取組を通じて消費者の信頼を確保することが、取引の発展の上で重要な意味を持つと考えられる。

 このため、通産省では、消費者保護に関する専門検討グループを設置し、以下に述べるような様々な論点を含めた電子商取引に関連する広範な課題等について、消費者保護の観点から把えるための、本格的な検討を開始している。

1.適切な取引判断を可能とする十分かつ適切な情報提供の在り方

(1)情報提供の重要性とその在り方

 取引に関する情報を得にくく、取引上立場の弱い消費者の利益を保護する ため、取引の内容や相手方等に関し消費者に対して十分な情報の提供の確保がなされることが重要である。

 現行法では、通信販売について、広告を行う場合の販売業者の氏名・住所、 販売価格・支払方法、商品の引渡時期・方法、返品特約、瑕疵担保責任特約等の事項の表示が義務づけられている(訪問販売法8条)ほか、代金前払いで受領する形で通信販売を行う場合に書面による通知義務が課されている(同法9条)。また、旅行業法(12条の5)や宅地建物取引業法(37条)等においては、複雑な契約内容等に関し消費者が十分に理解し、トラブルを防止する等の観点から、書面の交付を義務づけ、取引内容等に関する情報明示を義務づけている。

 電子商取引についても、こうした現行法の規定が適用され、通信販売の一 形態として、取引内容等の表示義務が課されることとなる。今後、更に電子商取引の特性等を踏まえ、消費者等に提供されるべき情報の内容及びその提供方法に関し検討していくことが必要とされる。例えば、書面の交付義務については、ネットワーク上での取引を実施する事業者にとって負担となり、取引が阻害される可能性が指摘される一方、消費者にとっては、書面が重要な立証手段であるという、契約内容確認の実態を踏まえて、書面交付の重要性も指摘されている。この場合、例えば、消費者が選択して情報提供の方法を選べる仕組みの検討も一案ではないかとも考えられる。

 なお、ECOMが策定、公表した消費者取引におけるガイドライン案にお いては、出店者の身元証明事項(社名・商号・屋号、所在地、電話番号、FAX番号・電子メールアドレス、業法に係る資格がある場合はその内容)、商品等の情報並びに販売条件(注文方法、商品等の名称、種類、主たる内容、商品等の対価額、数量、送料・手数料等、代金支払時期・方法、商品の支払時期・方法、商品の引き渡し時期、申込みの有効期間があればその期間、返品特約がある場合はその内容、ない場合はその旨、特別の販売条件があればその内容、請求によりカタログ等を送る場合に有料であればその金額、アフターサービスと保証の有無及び内容、画面表示と実際の商品と異なる場合はその旨の注意、連絡先の住所、連絡窓口等)を表示することが盛り込まれている。

今後、現行法の適用と上記のような民間の自主的ガイドラインを実効ある形で策定・実施していくことによる対応が基本となろうが、更に現行法の適用関係の明確化、新たな規制・制度の導入の必要性を含め、検討を進めていくことが必要である。

(2)宣伝・広告の在り方

<論点>

 電子商取引が活発に展開するに従い、消費者に対する物品・サービスの広告・宣伝がネットワークを介して直接送信されることとなる。こうした状況の下、消費者の適切な購買判断を可能とする観点から対応を検討すべき問題は次の2つに分けられる。

・誇大広告、虚偽広告といった広告の内容そのものが消費者の誤った購買判断を喚起する問題

・消費者の意思に反して勝手に宣伝・広告のメール等を送信し、消費者に損害(コンピュータメモリの費消、削除するための手間や通信コストなど)を与える問題

1)誇大広告、虚偽広告といった広告の内容自体の問題

 取引に際して販売業者等の不適切な商品等の宣伝・広告により消費者の購買判断が歪められてしまう懸念が存在する場合について、現行法では、一定の行為規制を行っている。例えば、遠隔地間の通信販売取引に関し誇大広告や虚偽の広告が禁止される(訪問販売法8条の2)とともに、医薬品販売業(薬事法54条)、旅行業(旅行業
法12条の8)等においても取引に際しての広告の在り方に関する規制が存在する。電子商取引においてもこれら現行法の規定が適用され、通信販売の一形態として誇大広告や虚偽の広告が制限される。

 こうした電子商取引上の広告・宣伝を巡る問題については、新たな媒介 の適正な活用の在り方について、上記規制による対応と併せて、広告・宣伝の発信者側で自主的なルール作りを行うことが肝要となろう。ECOMの消費者取引ガイドライン案では、上記規制の対象の如何に関わらず、誇大広告・中傷広告、二重価格表示の禁止等の表示に関する遵守事項を盛り込んでいる。

 この広告内容に関し今後特に問題となるのは、クロスボーダー取引の進展に伴い、広告発信者と受信者(消費者)が広告内容に関して異なる規制が課せられている地域に所在するケースにおいて、広告規制の及ぶ範囲(管轄権)が不明確になるとともに、規制の実効性確保に関する疑問が提起されていることが挙げられる。

 EUでは昨年3月コマーシャル・コミュニケーションペーパーがまとめ られ問題提起がされるとともに、世界保健機構(WHO)でも本年5月より医薬品販売に関する販売規制や広告規制の在り方に関する検討開始を決定したところである。

2)消費者の意思に反した宣伝・広告の発信の問題

 ネットワークを介した宣伝・広告の発信は、広告主から見て低コストで一度に多数の受け手に対して発出することができることから、消費者側の意思とは無関係に大量の広告・宣伝を乱発する事例が増加している。一方で受け手である消費者側では、このような宣伝・広告の受信を拒絶する仕組みが未だ一般的ではなく、これら無用のメールを削除する間の時間、通信料金、メモリを浪費するという一方的な不利益を被ることとなり、消費者利益の新たな侵害態様を呈している。

 特にアメリカで顕在化しつつあるこのような問題に対しては、法律で対応しようという動きがある。

・ネバダ州法では、自らの意思に反する宣伝・広告のメールを受け取った消費者は、裁判所に申し出て、一時的に又は恒久的にそのメールを発出した広告主からの広告・宣伝を差し止めることができ、また一定の損害賠償を請求することができるとされる。

・連邦議会には、消費者の意志に反して広告・宣伝メールを発信することを禁止する法案や、広告・宣伝メールには一定の tag 付けをすることを義務付け、消費者がネットワーク・プロバイダに対してかかる tagの付いたメールを削除するよう要求できるようにする法案が提出されている。

<検討の方向性>

 こうした広告・宣伝問題については、広告・宣伝の発信者側で自主的なルール作りを行うことが肝要である。ECOMの消費者取引ガイドライン案の中でも、「広告・宣伝情報を送付する場合には事前に消費者が諾否を選択できる仕組みを作ることが望ましい」、「広告・宣伝の情報をもって行う勧誘は消費者からの申し出があれば直ちに取りやめなければならない」といった、電子メール広告拒否者に対する電子メールの送信を自粛する制度(E-mail Preference Service)が盛り込まれている。

 ガイドラインの普及と併せて、電子商取引における広告審査、苦情処理の在り方の検討も重要と考えられる。また、不必要なメールをフィルタリングする技術の開発・普及による解決も、効果的であると考えられる。

 今後はかかる民間の自主的ガイドラインによる対応や技術的対応を基本としつつ、消費者保護の観点から現行法の適用関係の明確化、新たな規制・制度の導入の必要性を含め、検討を進めていくことが必要である。

(3)取引相手方や商品等に関する信用・評価情報の在り方

 1)取引相手方に関する信用・評価情報

 消費者が取引を実施するに当たっては、取引相手方の信用評価に関する情報を十分に得て、適切な取引判断が可能となることが望ましい。ネットワーク上のクロスボーダー取引が拡大する現在、海外では募金収集、証券勧誘に関する詐欺等のトラブル事例も生じ始めており、こうした信用評価情報に関するニーズは一層高まることが予想される。

 これに関し、第三者機関による評価情報の提供の取組も始まっている。例えば、米国の広告審査団体であるBBB(Council of Better Buisiness Bureau)は、最低1年の事業継続の実績、広告の自主規制の実施、クレームに対する適切な対応の実施等の事業実施に関する一定の基準を満たしている事業者を登録し、シール添付を認めるというサービスの提供を実施している。また、プライバシーに関しては、類似のスキームによるTRUST−eの取組も存在する。今後、こうしたサービス機能の意義は高まる一方、コスト負担等の観点からの考慮も必要となると考えられる。

 なお、現在、(社)日本通信販売協会によって、会員企業に対し、協会自主ルールの遵守、トラブル時の協会からの指導を前提としてマークの付与を行い、消費者からの信頼性を確保するための取組も行われている。

2)商品やサービスに関する評価情報

 ネットワークを通じて消費者は世界中から多数の商品・サービスにアク セスすることが可能となるとともに、大量の商品・サービスに関し、消費者が商品等の適切な比較選択を可能とするためには、商品・サービスに関し評価情報を含めた十分な情報の提供が重要な鍵であると考えられる。

 このためにはまず、商品・サービスに関する情報を消費者の嗜好に応じ て検索・収集するための技術開発が必要となろう。現在、ECOMにおいてはかかる技術開発の基盤となる調査分析や、種々のエージェント技術等の特性や評価についての整理を行っているところであり、また情報処理振興事業協会(IPA)において、技術開発が推進されているところである。 一方、商品評価情報を商品提供主体以外の者が発信するようなサービスも有効との議論もあるが、誹謗中傷・名誉毀損のトラブル発生の危険性もあり、トラブルの未然防止と迅速な救済処理に向けたルール作り、仕組み作りが必要である点に留意する必要がある。また、評価の前提条件を明らかにするなど、評価手法の透明化を図ることも重要と考えられる。

 なお、ネットワーク取引においては特定機関の提供する商品等の評価情報に購買判断が多大に依存することとなる可能性が存在することから、かかる情報を保持活用する事業者が、不正競争の防止や、独占禁止の観点から問題となりうるのではないかとの考え方も存在し、今後検討が必要と思われる。


1999年12月5日のE-Commerceランキング
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2000年から2003年に変化する米国とその他の地域の電子商取引
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テネシー大学のDonald Bruce助教授の1979〜2003年個人税収計算
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総務省が2002年9月11日に公開した電気通信料金の国際比較
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Illustrirte Zeitung1849年5月26日に掲載された腕白小僧のしつけ風景
経済産業省が2004年6月11日に公表した平成15年度電子商取引に関する実態・市場規模調査
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