2)データベースに関する権利保護の問題
<論点>
電子商取引においては、デジタル化された様々な画像、映像、音楽、文字データ等がデータベースの形で提供される場合が多い。デジタルデータが容易にコピー・改変されうるという技術的環境の中で、こうしたデータベース作成者の権利の保護が重要な検討事項となる。
<基本的考え方>
データベースには、その素材の選択や配列に対して著作権に基づく保護が認められている。しかし、素材の収集方法や配列が単純で創作性が認められない場合や、データベースの素材を個別に抽出して配列を変更して再利用する場合には、オリジナルの著作権の有無に関わらず権利侵害にはならない可能性が高い。
例えば、全国の列車時刻表や航空機チケット情報などを定期的に提供しているホームページは、通常その列車運行データなどの素材の配列に創作性が認められるデータベースと考えられる。しかし、その時刻表データやチケット情報をコピーしてオリジナルとは異なる検索プログラムを別に付与し全国交通情報ページを提供した場合を想定すると、この場合、利用しているのは個々の時刻表データやチケット情報のみであり、オリジナルのホームページの持つ配列は変更してしまっているため、著作権侵害行為にはならない怖れが高い。このような場合、オリジナルのホームページの作成者によるデータの収集及びインターネットで提供するための情報システムの構築にかけられた投資は、保護を得られないことになる。
素材の配列も含めたホームページ全体がデータベース作成者に無断で利用されているのであれば、ほとんどの場合著作権法などによる法的保護が得られる。しかし、上記の例のようにデジタルデータベースに用いられている素材が、個別にまたその配列を変更した形で部分的に利用されている場合には、個々の素材の著作権者(この場合列車運行データに著作者はいない)を除く、素材の収集や組合せを行った者、加工や提供などを行った者、という意味でのデータベース作成者の保護が得られなくなる怖れが大きい。この場合でいえば、オリジナルのホームページを企画・作成した者の投資は守られないこととなりうる。
(諸外国の動向)
欧州では、昨年3月にデータベースの法的保護に関するEU指令が合意され、こうした素材の配列を変更した形でのデータベースの素材のコピー及び再利用の問題に対応するため、著作権法とは独立した新たな法的枠組みが提示された。具体的には、同指令で、創作性のあるデータベースの著作権法による保護を明確化すると同時に、データベースの作成に要する投資の保護を行うための独自の権利(Sui Generis Right)を新たに採用した。これはデータベースの作成者(実質的な投資を行った者)に対し、そのデータベースの実質的部分について抽出権(画面に表示するためのRAM等への一時的蓄積も含め、恒久的若しくは一時的に別の媒体に移送する行為に対する許諾権(いわゆる情報へのアクセスも含む))及び再利用権(抽出したデータベースのコンテンツの複製物を頒布、貸与、送信するなどあらゆる形態により公衆に提供する行為に対する許諾権)を付与することをその主たる内容としている。
本法制は、EU加盟国内では、ドイツがすでに国内法制化を行い、イギリス、フランス、スペインなども議会へ提出する法案の内容はほぼ固まりつつある状況にある。また、データベースの投資を保護する新たな法的枠組みについて、国際的にも国際知的所有権機構(WIPO)で継続的に検討がなされている。
米国でも本年10月に不正競争法型の法案が提出され公聴会が行われて いる状況にある。しかし、米国では、権利法による対応か不正競争法による対応か、またこうした権利設定がそもそも必要か否か大きく議論が分かれており、EUのように立法の方向性が定まってはいない。その背(としては、本法制は、その規制の内容如何によっては、データへの自由なアクセスが阻害され、データに対する投資を行ったことを盾にとった情報の独占を生むことに繋がる可能性が懸念されていることが挙げられる。
<検討の方向性>
技術的手段の普及によって、今後、デジタルコンテンツの複製や不正なアクセスには実効的な保護が与えられることが期待される。しかし、一度アクセスし、ダウンロードされたデータの再送信や加工等を禁止することは技術的には極めて難しい。このため、こうした技術的措置の効果が及びにくいところについては、一定の法的保護が必要になるものと考えられる。
公衆に無断でコンテンツを提供することによる被害から守るという点では、著作権法はすでに公衆送信権という形で必要な措置を執っている。しかし、EU指令が問題提起したようなデータベースの素材の配列を変更して再利用する場合のデータベース作成者投資の保護の問題については、我が国では手当がなされていない。
電子商取引の活性化、新たなデジタルコンテンツ市場の育成という観点からは、かかる投資の保護法制を積極的に検討すべきであるが、その際には保護の内容によってはデータベース作成者による情報の独占を生み、デジタルコンテンツ市場の競争を阻害する可能性もあることにも留意すべきである。 現在、EU指令の合意とWIPOでの条約提案を受けて、民間レベルでは(財)知的財産研究所において検討が進められているほか、政府においては産業構造審議会知的財産政策部会、情報産業部会における議論がスタートした。データベース投資の保護についての法的対応の要否や、保護の内容について十分な検討が望まれる。
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