教育の情報化(本文)-3

情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて-第II章 情報化に対応した教育環境等について

第II章 情報化に対応した教育環境等について

 第I章で整理した情報教育の円滑な実施を含め、情報化に対応した教育の実現のためには、まず学校における情報関連の基盤整備が不可欠である。そのために、コンピュータ、ソフトウェア、情報通信ネットワークなどを一層充実する必要がある。また、教員の指導力をさらに向上させるとともに、学校単独で情報化に対応することは困難であることから、外から学校を支援する体制を充実することが必要であると考える。
 本協力者会議では、学校の情報化の現状を踏まえつつ、今後必要となる充実策を検討して、これからの学校教育において、子供たちが豊かな環境の中でのびのびと学習が進められることを願い、諸条件の整備の方向を示すこととした。

1 学校教育における情報手段活用の基本的考え方

(情報手段活用の形態)
 学校におけるコンピュータの活用を検討する際、そもそもなぜ学校にコンピュータが必要かという議論になりがちである。本項では、まず学校教育におけるコンピュータ等の情報手段活用の基本的考え方を確認することとしたい。
 学校におけるコンピュータ等の情報手段の活用については、文部省が平成3年に作成した「情報教育に関する手引」と、第15期中央教育審議会第1次答申(平成8年7月)を一貫して、次の三つの形態が示されており、今後もこの基本認識にそって検討することが適当であると考える。

i 子供たちが情報手段の特性やその活用方法について学ぶ
ii 各教科等の学習指導に活用する
iii 指導計画の立案や学校経営等に活用する

(情報教育に不可欠な情報手段)
 情報手段は、第I章で述べた情報教育のために不可欠である。情報教育では、情報及びコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切に選択し活用することのできる能力を育成する。このとき、実際に情報手段を活用する経験を経なければ、そこで学習したことは、生きた実践力としては身につかない。もちろん、情報伝達の媒体や手段には、コンピュータや情報通信ネットワーク以外に図書や視聴覚資料、新聞等のメディアなど様々なものがある。広く一般的に情報を活用する能力を培うには、いろいろな方法で得た情報を比較検討したり、目的や条件によってどのような手段がより適切かを考えたりする学習活動が重要となってくる。
 これらの学習活動は、情報教育のために設置された教科や「総合的な学習の時間」だけでなく、あらゆる教科等においても展開することが必要である。そのために、できるだけ多様な情報手段が、学校の中で活用できるように整備されることが望ましい。
 また、障害のある子供たちにとって、コンピュータ等の情報手段がコミュニケーションを補助するなど社会参加を支援する重要な手段となる。このため、それらを使いこなす能力の習得を図るための情報教育が重要である。

(各教科等の学習指導での活用)
 学習指導に活用する形態は、コンピュータ等の機能の多様性から、様々な教科等の学習において他の視聴覚機器・資料や図書などと組み合わせて、それぞれの学習目的を効果的に達成するための活用形態である。これにより以下のような効果が期待できると考える。

ア 子供たちの興味・関心や意欲をたかめ、理解を助ける

 コンピュータやインターネットなどの情報手段を活用することにより、黒板に教科書、教員の一方向的な説明ではなかなかできない、子供たちの生き生きとした興味や関心を引き出すことが可能になると考える。例えば、図書教材などの静的な文字言語による情報だけでなく、実際的な体験活動と関連させながらコンピュータのマルチメディア機能や大型ディスプレイを活用することによって、絵や動画、音等で子供たちの感覚に訴えたり、抽象的な概念や思考の過程などを可視的にして理解の促進を図ったりすることができる。また、教員が授業の展開にプレゼンテーション機能を活用することによって、より動的で魅力のある授業改善につながることも期待される。
 また、インターネットを積極的に活用している学校では、発した情報に対して生きた反応が返ってくることを通して、子供たちの興味や関心を引き出し、受け身的な情報の受信者から主体的な情報の発信者になることを促すなど、自ら進んで考え、自ら進んで表現し、自ら進んで学んでいこうとする資質や能力を育成するのに極めて有効な道具であるとの報告があり、今後より多くの学校でこうした活用が期待される。

イ 思考力や判断力、創造力、表現力などを培う

 子供たちに思考力や判断力、創造力、表現力などの能力を育成することは、今後の教育の大きな目標の一つである。コンピュータなどを活用することによって、これらの能力を育成することも可能である。例えば、課題研究や探究活動の道具としてコンピュータのシミュレーションやデータベースの機能を活用したり、様々な思いや発想などを簡単に表現するための支援や訓練に、文書や図形、画像、音声の処理・保存機能を活用することが考えられる。また、インターネットを活用した交流活動では、住んでいる環境や風習などの違う相手に対して、自分の伝えたいことをどのように表現したら分かってもらえるか、子供たち自らが表現を工夫するようになったとの報告がある。

ウ 基礎・基本と主体的な学習の方法を習得させる

 今後の学校教育においては、指導方法の工夫により厳選された基礎・基本の教育内容を確実に身につけさせるとともに、子供たち自らが課題や目的意識を持ち、自ら意欲的に学習を進めるという主体的な学習の仕方を身につけさせることが課題となっている。このため、個々の子供の理解の状況や興味・関心等に応じて、様々な題材により繰り返し学習ができるように工夫された教育用ソフトウェアを活用することや、インターネットなどを学習の手段として活用する方法を身につけさせることが有効であると考える。また、こうした学習法は、時間的制約を受けないことから、特に、今後の生涯学習社会に向けて大切な視点だと考える。

エ 交流、共同学習など創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する

 インターネットなどの情報通信ネットワークは、その双方向性の機能を活用することによって、学習の対象を広げ、興味や関心を掘り起こし、他の学校や地域、国境さえも越えた交流を可能にする。また、インターネット上には豊富に情報があり、様々なホームページなどから必要な情報を容易に取り出すことができるなど、各学校の創意工夫によって多様な教育活動を展開することを可能にする。
 例えば、普段見聞きすることのできない遠隔地の情報を、現にそこに住み、生活している人たちからの生の声や映像で確認したり、それらの人たちと対話することで学習を深めることができるようになってきた。特に、障害のある子供たちと障害のない子供たちや様々な人々との交流は、子供たちの経験を広め、人間性や社会性を育むとともに、人々が障害のある子供に対する理解と認識を深めるなどの意義があるが、情報通信ネットワークを活用することによって、交流の機会の拡大や多様で継続的な交流の展開が期待される。
 また、環境に関する共同調査や種子の発芽状況の観察を、全国のいろいろな地域の学校が同時期に同じ方法で観察し結果を比較しあうことにより、自分の住んでいる地域や他の地域の環境や気候・風土などに関する理解を深めるという事例もある。これらの活動では、学習の方法や過程、その成果を共有することにより、協同する喜びを共有することができるようになってきている。

(教員の指導計画等の作成や学校経営等のための活用)
 教員が活用する形態は、教育利用というよりは様々な職場に共通する活用法である。学校の情報化を具体的に展開する形態として、学校教育の活性化や「開かれた学校」づくりに役立つとともに、今後の学校経営の大切な視点になると考えられる。
 教員の活動は毎日の授業実践が中心となるが、それを支えるために、学校図書館の図書や各種資料を有効に活用するとともに、教材や授業計画等の各種資料の作成、子供たちの学習状況や健康関係の各種データの分析や処理、教育情報や進路情報の収集や分析などにコンピュータや情報通信ネットワークなどの活用が期待される。
また、今後においては、異なる学校段階を含めた学校間の連携、障害のある子供たちとの交流、学校と家庭や地域社会との協力、地域や国を越えた学校間の交流など、様々な連携や協力が求められるようになる。これらの連携・協力を円滑に進めるためには、各学校の教員同士等の密接なコミュニケーションや必要な情報の蓄積・共有を図る必要があり、そのための手段として、情報通信ネットワークの活用が極めて重要な位置を占めるものと考えられる。
 さらに、教員自身が自己研鑽を継続していくことが必要であることから、日常的に可能な研修方法を確立することが重要であり、その観点からインターネットなどを教員の遠隔教育手段として活用することが考えられる。